新型ウイルスによる各国の金融緩和に加え、運用規模の大きい著名投資家、大企業がビットコインを受け入れていることなど好材料が相次ぎ、ビットコイン の価格は10月1日時点1BTCあたり110万円から、1月8日時点で435万円と一気に4倍近くになった
しかし絶好調だった上昇トレンドも長くは続かず、1月11日価格は急落。わずか12時間で414万円から一時340万円まで20%近く値下がり、コインチェックのチャットでは悲鳴も聞こえてくる始末
大きな調整もなく、110万円から一気に400万を超える上昇があったため、この程度の調整はあって然るべきとも思えるが、利確や不安売りが相次いだ様子。ボラティリティ(値動きの幅)の高いビットコイン が本性を表した形だ
ビットコイン への長期投資は誤りか?
ビットコイン は2017年の仮想通貨バブル崩壊後、2019年には30万円代の値をつけるまでに下落し、一時「オワコン」とまで言われたコインだが、2020年3月のコロナショックによる下落から回復した後は、順調に価格を伸ばし続けている
ビットコイン の価格は今後も上昇すると言われており、定期定期に購入し長期間売ることなく積み立てるべきだ。なんて声も聞こえてくる
しかし、ビットコイン の長期投資は必ずしも正しいのだろうか?
ビットコインはいずれ見限られる?
先に申し上げておくと筆者(取引歴1年程度、今のところプラス運用)はビットコイン の短期・中期トレードには賛成だが、5年、10年、それ以上を想定した長期保有には不安がある
その理由は、ビットコイン は通貨として使うには問題が多く、短期間・中期的には価値が上がっても、いずれ見限られると考えているからだ
筆者が上記のように考える理由を申し上げる前に、まずは長期投資推奨派の意見を見てみよう
まず、ビットコイン を長期投資すべきだと言う人の意見はこんな感じ
・ビットコインは価値の保存手段であり、安全資産である。ビットコインはゴールドのような安全なお金
・ビットコインの発行数には絶対的な上限(2100万BTC)があるため、需要と供給の関係から価格は上昇していく
・機関投資家、有名人の参入が相次いでおり、価格は上昇傾向
・決済サービス利用開始など、将来性が高い
・とりあえずビットコイン 買っておけば大丈夫 など
現時点でビットコインへの投資を行っている多くの方は、同じような認識では無いだろうか。筆者もこれらが全て間違っているとは思わない
しかし、注意したいのは「仮想通貨全体(ブロックチェーン)への期待」と「ビットコイン への期待」は分けて考えるべきと言う点
まず、仮想通貨という発明自体は疑いようの無い世紀の大発明。これまでの金融のあり方を変え、世界に大きな変化をもたらす可能性を秘めている。この仮想通貨全体への期待は膨らむばかり
だが、ビットコイン への期待はどうか
・持っていれば価値が上がっていくという期待
まず、当たり前の話だが、仮想通貨はビットコイン だけではない。そして、数ある仮想通貨の中で、ビットコイン だけがシステム的に優れている・・という訳ではない
ではなぜ、ビットコイン だけこんなにも価値が高いのか?その理由は仮想通貨の中ではビットコイン が一番人気だから
なぜビットコイン が人気なのか、これはシンプルに有名なことと「持っていれば価値が上がっていく」と考えられているから・・では無いだろうか。ある意味、宗教みたいな感じ
ビットコインはシステムが優れている訳ではない
何度も言うが、ビットコイン はシステム的に優れている訳ではない
スケーラビリティの問題があり、仮想通貨の需要が高まりによって取引需要が高まると、送金手数料が増えたり、送金に時間を要することになる
また、送金処理を行うための作業(マイニング)を行う業者には、新たに発行されるビットコイン が付与されるが、作業を早く終えたものだけが報酬を得られるシステムのため、その競争は熾烈を極めており、消費される電力は膨大
直接的に支払う事はなくても、通貨の送金に膨大なコストがかかっていると考えると、環境問題への対応力が問われる時代に社会的費用が高いビットコイン はシステム的に優れているとは言えない
なお、これらの問題に対処している仮想通貨は既に存在している。(イーサリアムなど)
ビットコイン がシステム的に優れたものでないとすれば、いずれは仮想通貨全体への期待と、ビットコイン への期待は分離されてくる
「ビットコイン」 の価値
ビットコイン はシステム的に優れておらず、その中身(システム)は固有のものではない。そしてビットコイン だけが価格上昇しているかと言うと、そうでもない
ビットコイン は過去1年で8800ドル→33300ドルと300%近く上昇しているが、時価総額2位のイーサリアムは145ドルから1000ドルへと600%以上上昇した。(イーサリアムには発行上限が無いが、価値が上がり続けている)
もしかすると、数年後ビットコイン に大規模なシステムの改変がなされ、画期的な仮想通貨に進化しているかもしれないが、これまでの流れから見て非中央集権型のビットコイン に大きな手が加えられることは考えにくく、そのような手が加えられる前に画期的な仮想通貨は次々に生まれくるだろう
システム的にあまり将来性は無いとすると「ビットコイン 」という名前だけで、今後数十年人気を保っているだろうか?
筆者はビットコイン だから数十年後も人気があるというのは、甚だ懐疑的だ
金(ゴールド)は「金」という名前がついているから価値があるのではなく、他にはない固有で希少な原子を持っているから価値がある
一方、ビットコイン はシステム的には同じ(ましてやもっと優れた)仮想通貨がたくさんあるので、固有のものといえば、その名前ぐらい
いや、ビットコイン はビットコイン という「ブランド」なんだよ!と思われるかもしれないが、
数量限定のブランドだから、というだけで何十年も人気を保ち続けるだろうか
もっと言うと、ビットコイン は所有欲を満たしてくれるだろうか?画面に表示された10BTCなどの表記をみて、所有欲、幸福感を感じることができるか?
現行品よりも性能が低く、使い物にならないけど価値があるものは幾らでもある。ビンテージカー、壺、テレホンカード、ブランドシューズなどなど・・だが、ビットコイン はこれらのような存在になれるか?
ビットコイン にはビットコイン という名前しかない。味もない、手入れもできない、眺めても楽しくない。そんなものが価値を持ち続けるのだろうか。答えは火を見るより明らかでは無いか
私の考えとは理屈が異なるが、かの有名な投資家のジム・ロジャーズも、別の視点から価値がゼロになると話している
■ビットコインの価値はいつかゼロになる
100年前には、誰もが好きな物を通貨代わりに使えた。しかし80年前にイギリスの中央銀行が「私たちが発行する紙幣以外のものを使えば反逆罪で処刑する」と宣言した。誰も処刑されたくないから、皆が他の通貨を使うのをやめた。
仮想通貨も同じだ。通貨として価値が認識され、成功し始めたら、各国の政府がすべての仮想通貨を独占するだろう。現在はさまざまな人が仮想通貨を売買しており、価格が急騰している。彼らから見れば投資かもしれないが、私にとってはバブルの予兆であり、ただの投機のように感じる。
世界的投資家ジム・ロジャーズがバブル破裂を予感する"ある兆し"
ビットコインの取引について
最初の方で申し上げたが、ビットコインの短期的・中期的な取引には賛成。今後もしばらくは上昇してくれる可能性はあるが、思考停止で毎月積み立て、放置してればいいと言うのは誤った考えだと思う
仮想通貨は情報戦。次の日にはどうなっているか全くわから無い。どこかの何かの発表で、突然暴落することもあれば、暴騰することもある。ビットコイン の将来性が絶たれる発表が突然あるかもしれない。保有する以上は常にアンテナを張り、動向は注視すべき
持っておけば価値が上がっていくと言うのは、何の根拠もない迷信と言うことを理解し、本当に危ないと思った時は、躊躇なく資産全額を換金する用意が必要
また、仮想通貨に投資する場合はビットコイン だけでなく、イーサリアムなどのある程度使用力のある仮想通貨にも分散投資すべき。リスクを分散させるのは大切だし、いつビットコイン と立場が入れ替わるかわからない
ただし、上場したばかりの草コインには注意が必要。リスク分散として草コインに投資するのはオススメしない。草コイン投資はギャンブルでしかない
英金融規制当局の金融行為監督機構(FCA)は12日、仮想通貨を使って資金を調達する「新規仮想通貨公開(ICO)」について、「極めて高リスクの投機的な投資だ」と警告した。ICOが詐欺に悪用されるリスクがあるとして、投資する場合には全損を覚悟するよう投資家に注意を喚起した。
日本経済新聞:英金融規制当局、「ICO」投資に警告 「全損の覚悟を」
以上、ビットコインはゴールドにはなれない。でした。